2014年9月3日水曜日

なぜ私は中国人になれないか::海外の優秀な人材呼び戻す中国の施策

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ウオールストリートジャーナル 2014 年 9 月 2 日 14:01 JST
By Eric Liu 原文(英語)
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970204091304580128923934297904?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

なぜ私は中国人になれないか


●左から、駐中国米国大使を務めたゲイリー・ロック氏、ザッポスのトニー・シェイCEO、レストラン経営者のエディー・ファン氏、労働者の権利擁護団体代表のアイジェン・プー氏 Photo Illustration by Sean McCabe; ChinaFotoPress/Getty Images (Gary Locke); Reuters (Tony Hsieh); Associated Press (Eddie Huang); Getty Images (Ai-jen Poo)

 どんなに努力してみても、私は中国人になれない。

 それは、頭の中の実験として始まった。
 私は、中国人移民の息子である自分が中国の市民になるには何が必要だろうかと思いめぐらし、一番近くにある中国総領事館に電話した。
 だが、誰も電話口に出ない音声録音の迷路に入ってしまった。
 総領事館のウェブサイトは、ビザ取得の手続きは説明していたが、帰化については何も説明していなかった。

 その後、私は回答を得るのが極めて難しいことを自覚した。
 北京の中国政府はそもそも中国市民になりたいという外国人からの照会を想定していない
のだ。

 後で判明したのだが、帰化の手続きは中国の国籍法の中にある。
 しかし帰化しようとする人は極めて少数だ。
 2000年の中国国勢調査では帰化した市民はわずか「941人」にすぎない。

 しかし、私がマンダリン(中国の標準語)に流ちょうになり、中国と歴史と文化に対する造詣を深め、中国に移住してそこで余生を過ごす決意をしたとしよう。
 その場合でさえも、私の背後にある何千世代もの中国人の遺伝子にもかかわらず、私は依然として真の中国人として受け入れられないだろう。

 このことが、中国が台頭し米国が衰退しているとされる現代においても、われわれ米国人がそれほど心配すべきでない理由を明らかにしている。
 中国の国内総生産(GDP)がいかに膨大になろうとも、
 米国は圧倒的で永続する競争上の優位性を保持している
 それは米国は中国系米国人を生み出すが、
 中国は米国系中国人を生み出さないからだ。

 中国はまた、米国系中国人を生み出すことにそれほど関心を抱いていない。
 移民を歓迎し、社会に組み込み、権利を与え、それによって
 「中国人であること」の意味そのものを再定義
することは、中国を動かしているシステムにはない。
 それは、中国が21世紀的に米国に後れをとっていることを意味する。
 多様性を包摂し、多くの多文化的なパーツから何か偉大なものを創造することだ。

 例えば、中国の国営メディアが今年初め、離任する米国の中国駐在大使、ゲーリー・ロック(駱家輝)氏を「バナナ」と揶揄(やゆ)した。
 外は黄色で、中は白色だという意味だ。
 中国系米国人として初の中国駐在大使であり、それ以前にはイーグル・スカウト(アメリカ・ボーイスカウトの最高階級)、ワシントン州知事、そして商務長官だったロック氏は何をしたために、このような悪口を言われたのだろうか。
 彼の仕事ぶりだ。
 彼は米国の利益と価値を代表し、それらが中国のそれと衝突した際にも譲らなかった。

 このエピソードは、中国を支配するエリートが中国人と中国系米国人とを区別したがらないか、あるいは区別できないことを示唆していた。
 「バナナ」という酷評の前提は、華人というものは、たとえ米国で生まれ育った者であっても、中国という母国に本質的に忠誠を誓っているに違いないという考えだ。
 そうした想定は、ロマンティックないし人種的と呼ばれ得るものだ。現代的とは言えない。

 私のような人々は、いわば「中国系米国人的な手法」を提供できる。
 粗野な個人主義をコミュニティー意識で微調整したり、権利と自己主張に根差す社会に、義務と礼節を加えたりすることができる。
 今輝いているものだけに注目するのではなく、背景や歴史にも目を配ることができるということだ。

 この融合を最も良く具現化しているのは、恐らく2世の人たちだろう。
 中国や台湾からの移民の子で、文化が交錯する米国で育った人々だ。
 ニューヨークに本拠を置くNational Domestic Workers Alliance (家事労働者の団体)の創設者Ai-jen Poo氏が好例だ。
 同氏は、大胆にも貧しい有色人種の女性労働者たちを支援している。
 なんと米国的なことか。
 その一方で同氏は、愛、世代間の相互扶助、家族の責任という言葉で、それを説明する。
 なんと中国的なことか。

 トニー・シェイ氏も良い例だ。
 靴通販サイト「ザッポス」の創業者で最高経営責任者(CEO)だ。
 同氏は自分の会社を、荒廃したラスベガスの中心部に移転し、自己資金3億ドルをつぎ込んで、この地域を復活させた。
 同氏の目標は、米国で恐らく最もコミュニティー意識の薄い都市であるラスベガスで、そのつながりを深めることだった。
 大胆に米国的であり、心底から中国的でもある。

 そこで、中国をアウトサイダー(外部の人間)が中国人になりにくい状態のままにしておこうではないか。
 偉大なる競争は今や、米中両国間で起こっているのではない。
 純粋さという幻想を追い求める国と、多元的な現実を押し進める国の間で起こっているのだ。
 われわれが正しい選択をすれば、わが国(米国)は依然として勝者で有り続けることができるだろう。

(注)筆者のLiu氏は米シチズン大学(Citizen University)の創立者で最高経営責任者(CEO)。近著に「A Chinaman's Chance」がある。




ウオールストリートジャーナル 2014 年 9 月 2 日 15:11 JST
By Dong Jielin
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970204091304580129032761287188

海外の優秀な人材呼び戻す中国の施策―批判と反論

 2008年以降、中国政府は優秀な人材の帰国を促すプログラムを通じて、
 海外で暮らす約4000人の「専門家」を中国に呼び戻した。
 「千人計画」と呼ばれるこのプログラムを利用すれば、1人当たり100万元(約1700万円)と「国家特別招聘専門家」という称号が与えられる。
 海外の中国人コミュニティーではこのプログラムが歓迎された。
 だが国内では、プログラムをめぐる議論が延々と続いている。

 帰国した専門家の中には、たまに顔を見せに来るだけの「専門家」がいるとの批判の声が上がっている。
 また、国内の同じような専門家や前任者に比べて、はるかに高い給料をもらっているため、恨みや反感が生じていると指摘する人もいる。

 同プログラムの運営を担当する当局は最近、業績の芳しくない専門家をプログラムから排除する仕組みの導入を提案した。
 すると今度は、個人のやる気に関する議論が蒸し返された。

 世間では議論が噴出しているにもかかわらず、このプログラムを利用する専門家からはあまり意見が聞かれない。
 そこで、ある専門家を招き、考えを聞いてみた。

 匿名を条件に話に応じてくれたこの専門家は、1982年に米国に留学し、88年に博士号を取得した。
 学術界と民間のテクノロジー分野で活躍し、2007年に起業のため中国へ戻り、09年にこのプログラムに参加した。
 彼の会社は再生可能エネルギー設備を扱っており、年間の売り上げは2億元(約34億円)を超える。

 帰国したのは必ずしも愛国心からではない 

 私はいくつかの理由で中国に帰ってきた。
1].妻は、私が米国での孤独に耐えられず、終わりに近づく青春時代を楽しみたかったのだと言う。
2].それは少しは本当だが、
 大きな理由は中国がどうなっているのか興味があったことだ。
 私たちが渡米したとき、卒業したら帰国するつもりだったが、実現しなかった。
 だから、帰国していたら私の人生はどうだったのだろうかという疑問がずっと心の中にあった。

3].もう1つの理由は、
 政府の支援を背景に、再生可能エネルギー産業がここ数年で非常に注目を集めていることだ。
 私たちの会社は国内外のベンチャーキャピタルから豊富な資金を獲得したが、中国の方がリソースを蓄積するのが容易だ。
 だから試してみようと思った。

4].3つめの理由は愛情に関わることだ。
 だが、必ずしも国に対する愛情ではない。
 私は大学生の頃からずっと家から離れて暮らしてきた。
 戻った時、両親は年老いていて、面倒を見る必要があった。

■「人材プログラム」の価値

 このプログラムは私の会社には現実的な利益をもたらしてくれる。
 例えば、会社に「国家特別招聘専門家」がいれば、国家的なテクノロジー関連プロジェクトに申請するのが容易になる。
 専門家の肩書きは余計な確認手続きを回避する一助にもなるうえ、既得権益による閉め出しからも守ってくれる。
 中国で事業を行うことは米国で行うよりも複雑だ。
 事実、問題の多くは政府の政策から生まれた副産物だ。

 「千人計画」が始まったのは、中国の科学界にある既得権益が原因だと思う。
 学者たちがすべての国家プロジェクトを獲得し、その教え子たちが下級レベルのプロジェクトを確保するために協力する。
 中国の学術・研究機関が海外の人材を呼び込むことに失敗してきたのは、
★.報酬が国際的な基準をかなり下回っていることと、
★.中国では良い人脈がなければ海外からの新参者がプロジェクトに申請するのが困難であること
が理由だと理解している。

 海外の中国人にはプログラムは歓迎された。
 このプログラムに参加したのはまだ数千人程度かもしれないが、海外で暮らす中国人の多くを帰国させる一助となった。
 彼らは中国で事業を始めることを魅力的な選択肢の1つだととらえ始めた。
 この傾向は経済的な恩恵を直接もたらすだけでなく、起業を促すことにもなる。
 私たちは若者のロールモデルになった。
 以前の従業員の中には自分で会社を始め、私たちのパートナーやライバルになった人もいる。
 その結果、業界全体が活気づいている。
 また、この制度を使って仕事するために戻った人たちは、故郷に新たな研究アイデアをもたらしている。

■プログラムに対する批判への反論

 企業にとって、給料と福利厚生について議論することは無駄なことだ。
 あなたの価値を決めるのは市場だ。
 他の人が高い給料をもらっていることにイライラするなら、別の仕事を探せばいい。
 私は帰国した専門家に与えられる高い報酬へのあらゆる妬みをネット上で見てきた。
 だが実際、帰国者のほとんどの労働契約はたかだか数年だ。
 一方、国内の大学の職員は比較的安い給料にもかかわらず「鉄飯椀」で恩恵を得ている。
 つまり、給与制度がそれぞれ異なるということだ。
(訳注:鉄飯椀とは絶対に割れない鉄のご飯茶わんのことで、終身雇用と年金保証を意味する)

 中国国営中央テレビ(CCTV)のシリーズ番組「Deng Xiaoping at History's Crossroads(歴史の岐路に立つトウ小平)」を見たことがあるだろうか。
 これは私たちの時代の話だ。
 当時は誰もが潮の流れにのまれた小舟だった。
 トウ小平のおかげで、私の小舟は遠いところへ流れ着き、多くの素晴らしい景色を堪能した。
 そして、奇跡的にも再び故郷に流れ着いたのだ。

 (注)Dong Jielin氏は蘇州大学ビジネススクールの教授



2014.09.05(金)  Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41663
(2014年9月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


中国の「偉大なる復興」で人種問題への態度の硬化も

今年8月、米ミズーリ州ファーガソンで白人警官が武器を持たない10代の黒人青年を射殺した事件は暴動と内省を引き起こし、米国はその多民族社会が持つ忌まわしい側面と向き合うことになった。

 また、米国の騒動は、ロシア、イラン、中国、北朝鮮など、ひどい人権侵害の過去について批判されることに慣れている国々の権威主義的な政権にプロパガンダの贈り物を与えた。

 米国中部の郊外の町で完全武装した警官がデモ隊と対峙すると、これらすべての国の国営メディアは、他人の不幸を喜ぶ気持ちを隠すことができなかった。

 市民の扱いが国連が人間性に対する犯罪と呼ぶものに当たる北朝鮮は、米国を「人権の墓場」と断じた。

 負けじとばかり、中国の国営メディアは、米国の人種差別主義を「米国社会を分裂させ続けている根深い慢性病」と表現し、米国に対し、「常に他国を批判するのではなく、自国の問題に集中すべきだ」と忠告した。

■黒人は「猿」、白人は「洋鬼子」、日本人は「小日本鬼子」

 しかし、中国は露骨な人種差別と無縁ではない。
 北京では、別の面では見識があり、教養を持った国際人である中国の企業幹部や官僚が、
 アフリカ人やアフリカ系米国人のことを「猿」と呼ぶのを聞くのは当たり前のことだ。’
 もう少し優しい表現でさえ、英語に訳すと「blacky(黒人)」となる。

 中国と接触した歴史を持つ事実上すべての民族に蔑称があるが、
 白人は一般に十把一絡げにされ、「洋鬼子」と呼ばれる。

 大方の中国人は白人を――本人に面と向かって――「老外(ラオワイ)」と呼ぶ。
 文字通り訳すと「古い外人」となる言葉だ。
 民族的に中国系の人たちは、米国に移住し、あらゆる意味において「米国人」になることができるが、
 外国人は、どれほど長く中国に住んだとしても、同化するためにどれほど努力したとしても、いつまでも老外だ。

 人種差別的な特別な蔑称が、日本から来る隣人のために取ってある。
 日本人は「小日本鬼子」と呼ばれている。
 大多数の中国人は、日本に行ったこともなければ、一人たりとも日本人に会ったこともないが、第2次世界大戦の前と戦時中の日本軍の中国占領を理由に、すべての人が日本人という人種全体に対する深い憎しみを表す。

 大抵は中国を中心に回ってきた地域の有力国として、
 中国は常に文化的優位性に自信を持ってきた。

 しかし、常にそれが人種的に優位だという意識につながったわけではない。

 7~10世紀の唐王朝の間、中国があらゆる人種を聖なる首都に招き入れ、多分に地球上で最も進んでいた文明から学ぶのを歓迎したことはよく知られている。

 最後の王朝である清朝を含め、中国の偉大な王朝のいくつかは、中国の人口の9割以上を占める漢民族から従来野蛮人と思われていた異民族によって築かれた。

 現在、中国西部のチベットや新疆では、高圧的で家父長主義の政府の政策によって民族間の緊張が高まっているが、チベット人やイスラム教徒のウイグル人に対する日常的な人種差別もその原因となっている。

 中国で見られる人種差別的な態度は、中国がつい30年前まで外の世界を完全に遮断していた、非常に均質的な社会だという事実に起因しているのかもしれない。

■唐王朝のような寛容な時代への回帰か、それとも・・・

 しかし、この国に暮らす多くの外国人にとっては、政権を担う共産党が世界に対し、より強硬で国家主義的な政策を取るようになるにつれ、近年、人種問題に対する態度がますます硬化したように見える。

 この流れは、「中華民族の偉大なる復興」を実現するという習近平国家主席の願望に象徴されている。

 一見すると、これは称賛すべき目標だ。
 もしかしたら習氏は中国を、同国が唐王朝期に経験した比較的寛容な時代に戻す復興を思い描いているのかもしれない。

 しかし、歴史について極めて選別的で、外国人の手によって犠牲になったという被害者意識を助長する国家主義的教育とプロパガンダシステムに照らすと、
 このスローガンはもっと悪意のある見方ができるかもしれない。




レコードチャイナ 配信日時:2014年9月8日 1時53分
http://www.recordchina.co.jp/a93835.html

世界最大の移民送り出し国はインドの1417万人、中国は4位―中国メディア

2014年9月5日、中国新聞網は記事
  「世界の移民人口が史上最高に=中国人移民は過去23年間で500万人増加
を掲載した。

 ピュー・リサーチ・センターは2日、国連人口部の統計に基づき、1990年から2013年の移民の動向を研究した。
 移民の送り出し国1位はインド。
 13年時点でUAEに290万人、米国に210万人が移住し、世界全体では1417万人が移住している。
 2位以下はメキシコ、3位ロシア、4位中国と続く。
 中国は934万人の移民を輩出している。
 1990年から500万人の増加となった。

 移民の受け入れ国1位は米国で4579万人。
 1990年の2325万人からほぼ倍増している。
 2位はロシアの1100万人。




【描けない未来:中国の苦悩】



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