2014年9月15日月曜日

「チャイナリスク」とは軍事拡大なのか、それとも経済破綻なのか?:「中国の10大社会問題」

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●中国の最新調査で「信頼性の欠如」が大きな社会問題に Reuters


WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2014年09月15日(Mon)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4189

真のチャイナリスクは軍拡か、経済破綻か

 アトランティック誌記者のロバート・カプランが、7月27日付フィナンシャル・タイムズ紙で、
 「中国の海洋進出による軍事的緊張よりも、
 中国経済が崩壊するリスクの方が世界にとってはより大きな問題である
、と言っています。

 すなわち、現在、中国に関する2つの論争がある。
 1つは、南シナ海・東シナ海における中国の侵略に関するもので、これは、
 経済のことをほとんど知らない海軍戦略家と外交官の間で行われている。
 もう1つは、中国経済の脆弱性に関する議論で、これは、
 海軍戦略と外交についてほとんど知らないエコノミストの間で行われている。

 これら2つの議論は、本来どこかで交わるべきものだが、そうなることはほとんどない。
★.前者の議論では中国を無敵のように見る一方、
★.後者の議論では中国を内部崩壊の瀬戸際にあるように見ている。

●.第一の論争については、中国の軍事的台頭は、日本を消極的平和主義から脱却させ、ナショナリズムを再発見させた。
 その結果、東アジアの安定は当然のものとは言えなくなっている。

 中国の海軍増強に関する議論は、これを阻止すべきだと考えるか、受け入れるべきと考えるかである。
 これらの議論は、双方とも、中国の軍事力は増強し続けるという前提に立っている。
 しかし、仮に中国が、例えば、内政的、経済的圧力を受けて、軍事力を増強できなくなった場合にはどうだろうか。

●.第二の論争は、中国経済はなんとか問題を切り抜けられると見るか、
 それとも、中国経済は崩壊すると考えるかである。

 この議論で抜けているのは、中国が経済問題を切り抜けると言っても、それはどの程度なのか、またそれが民族的、社会的、政治的緊張にどのような影響を与えるのか、という点である。
 中国経済が数年間停滞するのと、
 いきなり内部崩壊するのとでは随分違いがある。

 「切り抜け論」を支持する人々は、中国は困難に直面した際、政府の正統性を維持するために、海洋で、より攻撃的なナショナリズム的行動をとり、民族的・社会的緊張を封じ込めるだろうと見る。
 これに対し、経済が崩壊に向かう場合、多数派である漢民族とチベット、ウイグルとの間の民族紛争に火をつける可能性がある。
 こうした社会的、経済的圧力は、中国が国防費を増額し続けることには限界があることを露呈させるかもしれない。
 ここが南シナ海・東シナ海における問題と経済問題の交わるポイントである。
 中国経済が停滞した場合には海洋における更なる侵略的行動を導くが、経済が完全にダメになった場合には反対のことが起きる。
 要するに、これは中国経済がどれだけ弱いかという、程度の問題なのである。

 中国経済が崩壊すれば、西太平洋における脅威は軽減されるが、それと同時にアジアと世界の経済は混乱に陥ることとなる。
 単純に言えば、世界はより不安定になるのである。
 今日の海洋における緊張は、中国経済が脆弱化したときに起きることと比べればマシな状況と言える、と論じています。

* * *

 ロバート・カプランは、事象を少ない変数でシンプルに説明することを好む人で、それが幅広い読者層の人気を得ていますが、その反面、「ではどうすればよいのか」という具体的な政策論にはあまり踏み込むことがありません。

 この論説も、長期的な中国経済の停滞の見通しと、南シナ海、東シナ海における中国の進出を現在直面する最大の問題と捉えながら、その両者の間の整理について、色々と言葉を費やしつつ、結局は、それにどう対応すべきかという政策の提示はありません。

 結論らしきものがあるとすれば、中国経済の崩壊が世界に及ぼす影響の大きさを考えれば、現在程度の海洋における脅威のほうがマシではないかということです。
 しかし、経済と政治、安全保障との関係については、おそらく、経済と政治は、究極的には無関係であろうと思います。
  そして、日本が直面している問題は、将来の中国経済の衰退ではなく、今後10年間を考えて、過去20年間の蓄積で年々巨大化しつつあり、それが、今後ともしばらくは6~7%成長でさらに増大していく、巨大中国にいかに立ち向かっていくかということです。
 カプランの論には、到底、与することは出来ません。



ウオールストリートジャーナル 2014 年 9 月 16 日 18:18 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB12785023003277603623104580157460203238600?mod=WSJJP_hp_bottom_3_3_bucket_2_right

中国の10大社会問題-官僚の「信頼性欠如」がトップ

 中国の国民が感じる社会問題に関する最新調査で、官僚の「信頼性の欠如」がトップとなった。

 この調査は中国共産党機関紙「人民日報」が発行する雑誌「人民論壇」の委託で行われた。
 それによると、回答者の58%が官僚は
 「国民生活には関心がなく、神様のことだけを気にしている。
 これは権力に対する彼らの考えを反映している」
と感じている。

 人民論壇はその最新事例として、武術のような気功の実践者、王林氏のことを取り上げた。
 国営の新華社通信などの報道によると、王氏は政府高官やその他の著名人の宗教的助言者になってから裕福になった。
 王氏からはコメントを得られなかった。  

 人民論壇は「党の団結と闘う力を弱める腐敗官僚」を激しく批判した。
 調査結果によると、回答者の51%が信頼性の欠如は「非倫理的な行為が見過ごされているため」と指摘。
 また、5分の1が「欲得ずく」の市場経済を原因の一つに挙げた。 

 調査で指摘された問題のほとんどに中国政府に対する幅広い不満がはっきり表れている。
 約49%が「傍観者的な態度」として知られる国内の傾向に懸念を示した。
 この概念は身勝手、つまりあまりにも利己的であることとほぼ同義で、回答者は国家公務員がまさにその典型だと答えた。

 10大社会問題の中で4位は「習慣的な不信感」で、回答者の40%がこれを挙げた。
 主に不信を感じるのは順番に
1].「政府が言うこと」、
2].食品の安全性、
3].医薬品の安全性、
4].地元の医師の質
だった。

 回答者の39%が富をひけらかすことを問題に挙げ、約3分の1が社会に広がる快楽主義に不安を感じると答えた。

 中国政府はここ数カ月、官僚への不信感が高まっている世論の操作に一層の努力を傾けている。
 共産党は汚職摘発を担当する中央規律検査委員会の大物を呼んでオンライン討論会を開いたほか、習近平国家主席は汚職撲滅運動を自身の代表的な政策に掲げている。

「中国の10大社会問題」は以下の通り。

1].信頼性の欠如
2].傍観者的な態度(あるいは利己的な態度)
3].仕事・生活・社会的地位に対する不安
4].習慣的な不信感
5].富をひけらかすこと

6].社会のスキャンダルを美化して楽しむこと
7].快楽主義
8].極端で暴力的・反社会的な行為
9].インターネットへの過度の依存
10].自虐的な態度



レコードチャイナ 配信日時:2014年9月19日 19時39分
http://www.recordchina.co.jp/a94441.html

中国の10大社会問題、
2位の「傍観者的で利己的な役人」を抑えてトップになったのは?―米紙

 2014年9月16日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、中国誌がこのほど実施した世論調査の結果を掲載。
  「最も憂慮する」と中国人が指摘した社会問題トップ10を紹介した。
  18日付で参考消息網が伝えた。

 1位は「官僚の信頼性欠如」。
 2位以下は順に「傍観者的で利己的な態度」
 「仕事・生活・社会的地位に対する焦りや不安」
 「習慣的な不信感」「富のひけらかし」
 「世の中のスキャンダルを楽しむ心理」
 「快楽至上主義」「反社会的行為」
 「インターネットへの過度の依存」
 「自虐的な態度」となっている。

 この結果から、国民の政府に対する不満が見てとれる。
 回答者の51%が
 「官僚の信頼性欠如」について、
 「モラルに反する行為が処罰を受けないだけでなく、一部の人間にとって模倣の対象になっている」
ことを主な理由に挙げている。
 「傍観的利己的なな態度」は事なかれ主義で見て見ぬふりをする役人を指し、
 「習慣的な不信感」には
 「政府の言うことは何も信じられない」
 「食品や薬品への不信」
 「医師の職業モラルへの不信」
などが含まれている。



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