2014年10月12日日曜日

しぼむ「一つの中国」の夢―香港の混乱で:中国から遠のく台湾

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ウオールストリートジャーナル 2014 年 10 月 9 日 12:37 JST
By ANDREW BROWNE 原文(英語)
http://jp.wsj.com/news/articles/SB11713596470002413933104580203250343975796?mod=JWSJ_EditorsPicks

しぼむ「一つの中国」の夢―香港の混乱で



●サッチャー英首相(当時)との協議に臨む鄧小平(1984年) Agence France-Presse/Getty Images

 【香港】
 現代中国の指導者たちにとって、「一つの中国」の夢の実現以上に愛国的な重要性を持つ任務は他にない。

 鄧小平は、香港が台湾の人たちの心を取り戻すチャンスだと考えていた。
 台湾は夢の実現を一番難しくしている場所
だからだ。
 自由に行動できる香港は、「一国二制度」のモデルが機能し得ることを示せる機会となるはずだった。

 そしてこの考え方によれば、中国が香港を編入し、既存の資本主義制度や生活様式を保持できれば、台湾の「同胞たち」に対し、共産党支配下であっても彼らの未来も安泰であることを示せるはずだった。

 だが、習近平国家主席は今、
 台湾が中国の一部に戻るという夢が限りなく遠い未来に遠ざかり
つつある様子をじっと見つめている。
 香港で民主化を求めるデモによって一部地域が機能不全に陥っているからだ。

 中国政府のレトリック(言い回し)には明白な形で表れていないが、ここ数週間の香港の抗議運動の結末で最も重要なことの1つは、
 中国が台湾とその市民2300万人の再統一を実現できるというわずかな望みが一層小さくなっている
ということだ。

 その影響はすぐには感じられないかもしれない。
 だがそれは、時間とともに大きく波及し得る。
 中国政府の言う「平和的な再統一」の望みの裏には、必要であれば武力行使も辞さないとの意向がある。
 このため、台湾海峡は米中の衝突の潜在的な発火点であり続けている。
 米国は台湾の主要な武器供給国であり、国際的な支持国でもある。

 中台の政治的和解の見通しが次第に消えていくなか、
 緊張は高まると予想したほうがいい。

 中国自身のもくろみによると、香港は台湾再統一のためのカギとなる存在だった。

 香港返還は比較的単純だった。
 英国が統治していた香港主要部の租借期間が1997年に終了したために、中国の支配下に戻された。
 一方、自治の島である台湾は、強力な前例がなければ納得しないだろう。

 しばらくの間はうまくいくように見えたが、
 多くの台湾人にとって、香港は今や「悪い前例」
になっている。
 それは、
★.中国が真の民主主義を容認せず、
★.自治の約束を守るとは思えず、
★.洗練された住民たちとその政治的な願望に対応するために必要な柔軟性に欠ける
ことを示す証しだ。

 台湾の場合、失うものはもっと多い。
 実質的な独立国であり、既に民主主義が根付いているからだ。


●香港の民主化デモ支持を訴える台湾の学生たち Getty Images

 今年、台北で発生した学生主導の抗議活動「ひまわり運動」では、
 「今日の香港は明日の台湾」
という言葉がスローガンになった。
 これは中国との自由貿易協定(FTA)に反対する運動だった。
 反対派は、FTAによって台湾は中国本土からの経済的な威圧に対して危険なほど脆弱(ぜいじゃく)になると主張した。

 今や習主席は、台湾と香港の2カ所の学生団体と同時に対決しているといえる。

 悪いことに、台湾と香港双方の学生団体は共通の利益を模索している。
 ひまわり運動の指導者たちは、街頭での戦術や交渉スキルを香港の「雨傘革命」運動の指導者たちと共有している。

 そして、これら全てが既に不人気の台湾の馬英九総統を弱体化させた。
 馬総統は中国との緊張緩和を試み、中国本土との経済統合を進めようと努力してきた。
 同総統のこうしたアジェンダ(政策目標)は、最終的な政治的和解に向けた少なくともいくらかの望みを中国に与えている。

 馬総統はここにきて、香港のデモへの支持を表明し、
 「(同総統率いる)国民党は香港市民の普通選挙への要求を十分理解し、支持している」
と述べている。

 実際は、台湾と中国本土との関係を決定付けたのは、ずっと以前の1980年代末だった。
 台湾に民主主義体制が築かれたときだ。
 街頭での大規模なデモが催涙ガスと警棒による攻撃によって一層激化し(先週の香港と同様だ)、当時総統だった蒋経国が戒厳令を解除した。
 彼は、国共内戦に敗れた国民党を率いて1949年に台湾に来た蒋介石の息子だ。
 蒋経国は、分裂した反対分子の団体による野党創設を容認し、台湾の政治的自由化に向けてかじを切った。

 民主主義の確立は、国民党の実力者ではなく台湾市民が再統一についての最終決定権を持つことを意味する。
 台湾市民は自分たちの希望を極めて明確にした。
 すなわち、正式な台湾独立は戦争を引き起こすので、ステータスクオ(現状維持)で手を打とう、という路線だ。

 香港について言うと、民主主義を求める戦いが遅すぎた。
 中国は今、香港を支配下に置いている。
 香港の学生たちは2017年の行政長官選挙での完全な民主主義を要求しているが、彼らに変革の力はほとんどない。

 加えて習主席には、蒋経国のような政治的改革者として歴史に残ろうという意思がない。

 しかし習主席は、政治的分裂を解消させた中国の指導者として歴史の教科書に載ると期待すべきでもない。
 その「聖なる任務(一つの中国の実現)」は今や、彼の手の届かないところに行ってしまったのだから。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2014年10月10日(Fri)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4278

中国に対する台湾の「世代間認識ギャップ」
中台政策に対する若者の疑念、抵抗

 台湾国立政治大学中国研究センター長の王振寰(Wang Jenn-hwan)が、9月3日付タイペイ・タイムズ紙掲載の論説で、ひまわり運動を契機として、台湾では両岸関係についての世代間の認識ギャップが顕在化しており、中台両政府は、新たな思考を必要としている、と述べています。

 すなわち、現在、中台関係に最も大きな影響を与えているのは、世代間の認識ギャップである。
 ひまわり運動の後、
 台湾政府は、若い世代が中国との交流のさらなる強化に賛成していない
ことに気づいた。
 他方、中国は、台湾に対する経済的、政治的働きかけがあまり奏功していない理由は、
★.中国の台湾社会への理解不足だけでなく、
★.台湾の若者のアイデンティティをコントロールできない点にもある
ことに気づいた。
 中台間で、「社会的ギャップ」が拡大、深化していることは明白である。

 中台関係にかかわるあらゆる政策が、
 台湾の若者の疑念、抵抗に遭っており、台湾の社会に浸透していない。
 経済的統合への抵抗は、次のような、深い構造的要因の結果である。

 第一に、40歳以下の若者は、台湾の民主化プロセスの真っ只中、台湾しか知らない世界で成長しており、
 中国への心情的な愛着やアイデンティティは皆無である。
 だが、40歳以上の人々は、国民党の「偉大な中国」教育を受けて育ち、中国人であるとはどういうことかについて、一定の理解がある。

 第二に、多くの若者が台湾は経済を発展させるために中国を利用する必要があると認識し、中国で働く用意もある、との研究結果がある。
 だが、これは、若者たちが、経済的統合が政治的統一に至るべきであると考えていることを意味しない。
 若い世代は、民主主義と自由に、自信とアイデンティティを持っている。
 それが、彼らが中国の強権的政府に強い不信感を抱いている理由であり、中国が現在の政治体制のまま台湾の若者の心を捉えることは、困難になっている。

 第三に、台湾の若者の中国への信頼の欠如は、中国のパワー増大に益々不信感が高まっていることを反映している。
 彼らは、「アジアの虎」としての経済的奇跡の頂点、緩やかな停滞、給与水準の低下、雇用機会の緩やかな喪失を経験してきた。
 対照的に、中国は、貧困を脱して強い経済を手に入れ、上海や北京などの大都市はグローバルなメガロポリスになり、そうした都市では給与が台北を上回っている。
 こうしたことは、台湾の若者に、搾取されていると感じさせ、国民党への不満を増大させ、中国の強権的制度を拒否する原因になっている。

 中台関係における「社会的ギャップ」に取り組むには、中台政府は、思考を新たにせねばならない。
 国民党は、台湾の若者を、経済的グローバリゼーションという言葉で説得しようとすることは最早できない。
 中台関係の「逆行」を解決するには、彼らの不満、懸念、対中不信を真正面から受け止め、世代間の公正に資する、社会・経済政策を採用しなければならない。
 中国政府は、ひまわり運動を受け、台湾の社会により目を向けるようになったが、台湾の若者とその考え方への対応には、なお忍耐が必要である。
 台湾の若い世代は、中国については「血は水よりも濃い」とは感じていない
と論じています。

* * *

 論説は、台湾の民主主義が不可逆的であることを改めて示しています。
 特に、民主主義台湾しか知らない若者の、独裁的な中国に対する不信感が、上の世代よりも著しい、と言っています。
 また、多くの世論調査がそういう結果を示しています。

 本年3月の「ひまわり運動」は、そのことを具体的な抗議活動の形で表面化させただけではなく、何十万人という一般市民たちがこの運動を支持し、行動したところに画期的意味がありました。
 中国共産党独裁体制は、民主主義の定着した台湾をコントロールすることは容易ではないと認識したはずです。

 中国側からの台湾人への呼びかけは
 「数千年の偉大な中華文明をもつ中国の懐にかえってくるように」
というナショナリズムの訴えです。
 しかし、このような呼びかけも、現実の彼らの生活には「本来、無関係なこと」なのでしょう。
 台湾人には、自由で民主的な手続きが保障されたシステムのもとで安心感の持てる生活を送れるかどうか
ということが何よりも重要です。

 中台関係の最新の動きの中で注目すべきことは、台湾側大陸委員会副主任(日本式に言えば、大陸問題担当副大臣。事実上の中国との交渉代表者)のスパイ容疑事件です。
 目下、本人は司法当局の取り調べを受けていますが、この事件は、ひまわり運動と並び、馬英九政権への深刻な打撃となっており、中台接近の動きに対し、また一つ大きな歯止めがかかった形となりました。



日テレニュース [ 10/12 1:17 NEWS24]
http://www.news24.jp/nnn/news89089683.html



中国首相、香港デモは「中国の内政問題」

 中国の李克強首相が、デモが続く香港について「中国の内政問題」との見方を示し、欧米諸国をけん制した。
 12日で2週間となった香港でのデモは、ピーク時に比べて参加者は減少傾向にあるが、香港政府が民主派のデモ隊との対話を見送ったことで、収束のメドはたっていない。
 こうした中、中国の李克強首相は10日、訪問先のドイツで会見を開き、デモが続く香港について「中国の内政問題」との見方を示し、香港問題に懸念を表明している欧米諸国をけん制した。
  また、
 「中国中央政府は一国二制度、香港人による香港統治、高度な自治という方針を貫徹している」
として、原則論を改めて述べた。
 中国の指導者レベルが、今回の香港デモに関して、正式にコメントしたのは初めて。



 (共同通信) 2014/10/12 09:05
http://www.47news.jp/47topics/e/258270.php

【香港デモ2週間】 中国、一切譲歩なし 報道規制で関心薄く


●香港政府庁舎前の幹線道路を埋めるデモ参加者=10日(共同)

 【北京共同】
 中国の 習近平 (しゅう・きんぺい) 指導部は香港の大規模デモについて、一貫して「不法活動」(中国外務省)と批判し続けている。
 共産党一党独裁の下、香港に対する「党の指導」を堅持する決意に揺るぎはなく、次期行政長官選の民主化を求める学生や民主派に譲歩する可能性は一切ない。

 中国当局は、党官僚など特権階級に不満を抱える貧困層が刺激されることを警戒し、香港の抗議活動に関する報道を厳しく規制している。
 実情を知るすべがない大多数の庶民は、抗議の実情や原因を理解しておらず、一部の人権活動家らを除いて関心は極めて薄い。

  李克強 (り・こくきょう) 首相は10日、訪問先のベルリンで香港問題について「中国の内政だ」と強調し、学生らの民主化要求に欧米諸国などから支持が相次いでいることに不快感をあらわにした。

 一方、香港に「高度な自治」を認める「一国二制度」を維持していく考えを表明して冷静に対応する姿勢をアピール。
 来月に北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に、中国のこわもてぶりを極力覆い隠したい思惑がにじんだ。

 中国政府関係者は
 「デモ参加者らはいずれ疲弊し、運動は沈静化する。
 暴力的手段さえ取らなければ習指導部に対する(国際社会の)批判が今以上に高まることはない」
と分析。
 民主化運動を当局が武力弾圧した1989年6月の天安門事件のような事態には発展しないとの見方を示した。

 中国メディアを通じて香港のデモを知ったという北京市の男性会社員は
 「香港人は普通選挙というわれわれが得ていない権利を既に手にした。さらに何が欲しいというのか」
と語った。



レコードチャイナ 配信日時:2014年10月11日 19時56分
http://www.nissen.com/home/shop/00/00/11/?gclid=COyvuKnWpcECFY6VvQod4QwA1g

「中国は民主主義に向かう絶好のタイミングを迎えた」台湾総統が呼びかけ―台湾

 2014年10月10日、RFI中国語版は記事
 「台湾双十節に馬英九総統が演説、中国本土に民主へ向かえと呼びかけ」
を掲載した。

 10月10日は中華民国の建国記念日「双十節」。
 台湾総統府前広場で記念式典が開催され、馬英九(マー・インジウ)総統が
 「民主主義を誇りとし、台湾を光栄とす」
をテーマに講演した。

 馬総統は、「一つの中国」の原則を確認した「九二コンセンサス」が馬英九政権6年間にわたる中台関係の平和的発展の鍵となった、「九二コンセンサス」は多くの台湾市民の支持を得ている、と強調した。

 また
 「中国本土はいままさに民主主義、憲政に向かう絶好のタイミングを迎えている」
と発言。
 民主主義と法治は欧米人だけではなく全人類の権利であり、台湾市民は中国本土や香港、マカオに喜んで民主主義の経験を伝えたい
と述べている。




レコードチャイナ 配信日時:2014年10月9日 15時10分
http://www.recordchina.co.jp/a95429.html

中台首脳会談はご破算に、APECには前副総統が出席―台湾

 2014年10月8日、環球時報は記事
 「蕭万長・前副総統が北京APECに出席、中台首脳会談はご破算に」
を掲載した。

 台湾紙・聯合報によると、台湾政府は11月に北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に蕭万長・前副総統を派遣する方針を固めた。
 習近平(シー・ジンピン)国家主席と馬英九台湾総統との直接対談が期待されていたが、ご破算となったもようだ。

 中国本土側は一貫して中台首脳会談の実現に前向きだったが、APECという多国籍会議の場で実現すれば、「一つの中国」原則を放棄したとの誤解を与えかねないと懸念しているという。

 今春の学生運動による議会選挙などを受け、中国本土側は馬英九政権が台湾の民意を代表しているのか、現時点での中台首脳会談の実現はむしろ台湾の反中感情を増幅させかねないと懸念していた。



2014.11.07(金)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42152

台湾と香港:だから言っただろう
(英エコノミスト誌 2014年11月1日号)

 香港の抗議活動は台湾の中国不信を煽っている。

 中国の主権下での香港の自治を保証することになっている「一国二制度」の仕組みは、最初は台湾のために立案されたものだった。
 だが、台湾では同制度は魅力を持ったことがなく、中国が香港の民主派のデモ隊の要求をのむのを拒んだことは意外ではないと受け止められている。

 しかし、香港と中国の対立は、本土との統一について台湾を熱中させるのを難しくする。

■中国の影響力を不安視する台湾の学生の「ひまわり運動」

 2008年に選出された台湾の馬英九総統は、台湾経済を中国経済と密接に結びつけた。
 中国側の期待は、これが政治的な統一への道を開くことだ。
 だが、馬氏でさえ、すさまじく民主的な台湾には、独自の主権に対する権利があると主張している。

 香港で生まれた同氏は、香港での民主化運動を支持した。
 10月10日の台湾の国慶節には、儀仗兵がライフル銃をくるくる回し、少女たちが蝶の真似をして踊る中で演説し、中国の指導部は香港を本土とは切り離された民主的な地域にし、中国が1980年代に経済特区を創設したときに資本主義の実験を行ったように、香港で政治改革の実験をすべきだと語った。

 台湾の野党・民主進歩党も香港の抗議活動を支持した。
 同党は長らく、台湾が正式に中国からの独立を宣言することを望んでいた。

 最近では、自党が本土との関係をうまく管理できることを有権者に示すことに必死で、以前ほどは強硬ではない。
 だが、民進党の支持者は当然、香港の抗議者たちに同情する。

 台湾の学生は特に、中国がじわじわと台湾に入り込んでくることを心配している。
 学生は馬氏の商業的な合意に政治的な条件が伴うこと、そして最終的には台湾がただの新たな香港になることを恐れている。

 このため、学生たちは3月の「ひまわり」運動で、中国とのサービス貿易協定に抗議するために台湾立法院(国会)を占拠した。
 10月1日には、高校生を含むおよそ5000人の群衆がひまわりに代わって香港の抗議活動のシンボルである傘を手にし、台北での集会で振った。

■一般市民があまり関心を持たない理由

 だが、台湾の一般市民の間では、抗議活動はほとんど影響を与えなかった。
 これは、
 台湾市民がすでに民主社会で暮らしており、一部は中国を外国として見ている
ためかもしれない。

 「大勢の台湾人が香港のために戦っているのを見かけないことは幸運だ。
 それは台湾人が中国に親近感を覚えていないことを示しているからだ」。
 民進党の蔡英文主席(党首)の側近のケティ・チェン氏はこう語る。

 台湾メディアによる抗議活動の報道の仕方も、1つの要因だったかもしれない。
 台湾3紙は香港の抗議活動にたっぷり紙面を割いたが、
 親中派の大富豪、蔡衍明氏が所有する「中国時報(チャイナタイムズ)」はデモを軽く扱った。

 香港警察が催涙ガスを使用したとき、
 台湾の「蘋果日報(アップルデイリー)」は「香港が泣いている」との大見出しを掲げたが、
 蔡氏の中国時報は野球に関する1面記事を掲載した。

 さらに、台湾人の大多数はテレビでニュースを知る。
 テレビは当初、抗議活動に微々たる注目しか向けなかった。
 その理由の1つは、台湾メディアの大半を苦しめる狭量さかもしれない。

■中国に甘いテレビに批判も

 だが、台湾のテレビ局は中国に甘いとの批判もある。
 というのも、テレビ局のオーナーが中国に事業上の利益を持つか、または持ちたいと考えているからだ。
 この批判は、中国本土で人気のメロドラマを制作している、三立電視傘下の民進党寄りの人気ケーブルテレビ局にも向けられた。

 ソーシャルメディアで怒りの反応が噴出すると、各テレビ局は次第に抗議活動の報道を充実させた。
 だが、それでも、テレビ局の報道は概して扇情的で、抗議行動を台湾と結びつけることはめったになかったと国立中正大学のメディアアナリスト、カン・ジョン・シャン氏は言う。

 馬氏が率いる与党・国民党は、2016年の総統選挙の前哨戦となる今年暮れの地方選挙で苦戦することが見込まれている。
 だが、これは香港ではなく、お粗末な統治と関係している。

 台湾の歴代の民選指導者のうち最も不人気な総統の1人に数えられる馬氏は、現在、3年間で4度目の食品スキャンダルと戦っている。

■中国の台湾政策も変わらない?

 中国の台湾政策も大きく変わりそうにない。
 中国の習近平国家主席は、台湾問題を将来世代に任せるべきではないと述べた。

 だが、中国の政策立案者と近しい台湾民主基金会の蔡瑋氏は、習氏は外交政策の大変な課題に台湾を加えるのを望んでいないとし、
 「香港があり、南シナ海があり、東シナ海があったら、
 中国には台湾に向ける余力はない」
と言う。

 習氏は結局、待たなければならないのかもしれない。
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